MyFairOlympics

フィギュア・スケート女子FS

2022.2.17

波乱の女子シングル、フリースケーティング(FS)も終わりました。
気になった選手の感想を、最終順位の低い方から順に書いてみます。

23位 河辺愛菜(SP15位、FS23位)
音楽はYoshikiさんのMiracleとの事でしたが、この声はサラ・ブライトマン!? あ、紅白で歌ったあれですね。

初めてのオリンピック、しかも、鍵山選手やシェルバコワ選手、トゥルソワ選手などと違って、河辺選手は世界選手権にさえ出た事がないんですよね。さらに言えばシニアの海外のグランプリシリーズもスケートカナダしか出てないみたいじゃないですか。いやー、それでいきなりオリンピックは恐ろしすぎる。「すごく怖かった試合でした」というコメントにも納得です。これからの人生、こんなコワイ事、そうそうないよ。でも、出場するだけでもスゴイ事で、こんな素晴らしい事も、そうそうないだろうなぁ。

19位  マデリン・シーザス(SP20位、FS18位)
「蝶々夫人」での演技。思わず浅田真央選手を思い出してしまったけれど、そういえば平昌五輪では宮原知子選手が使っていたし、トリノ五輪では安藤美姫選手も使っていました。荒川選手もトリノ五輪の前年に使っていたそうです。そして、日本人ではなくても滑りたくなってしまう名曲なのですね。

16位 カレン・チェン(SP13位、FS17位)
「なぜこの人が第二グループにいるんだろう?」という違和感がありまくり。一人でレベルが違うように感じました。スパイラルが美しいと言われているけれど、何もしなくても滑り自体が美しい。ジャンプの失敗で下位に沈んでしまったけれど、ジャンプ失敗しても見てられる、見ていたい選手ですね。

10位 マライア・ベル(SP11位、FS8位)
"Hallelujah"での演技。三浦・木原組と同じ曲ですが、こちらはk.d.ラングのヴァージョン。
「年齢なんて関係ありません。それは単なる数字に過ぎませんから」は名言! そして、アダム・リッポン・コーチが見られるのが嬉しい私です。

6位 ユ・ヨン(SP6位、FS4位)
『レ・ミゼラブル』をやってくれたのが嬉しい!! 素晴らしい演技でした。フリーだけだったら4位だったんですね。

5位 樋口新葉(SP5位、FS6位)
またしてもトリプル・アクセル決めちゃいました! すごいすごい!!
SPは「え、樋口選手、こういうのも出来るの!?」という驚きがありましたが、フリー(『ライオン・キング』)は「これぞ樋口選手!」という感じで、また好きですね。 織田信成さんは「この振り幅はもう表現おばけ」とおっしゃってましたが(笑)、ホント別人みたい。転倒が残念でした。

4位 カミラ・ワリエワ(SP1位、FS5位)
「歴代で一番優れた女子選手かもしれない」的な事を団体戦の時に書いてしまいましたが、まさか、こんな事になるとは。
もう、何と言ったらよいのか……。
「オリンピックに出さない」という制裁は15歳の少女には厳しすぎるかもしれません。
けれども「オリンピックに出して、好奇の目に晒される」というのも厳し過ぎた……。
彼女を守る為に決めた選択だと思いたいけれど、果たして正しかったのか?
その答は、今は誰にもわからないかもしれませんね。
温情で出させてくれたのかもしれないけれど、彼女は「オリンピックに出るだけで嬉しい」というレベルの選手じゃありません。世界一の実力を持つ選手です。しかも、あの日のオリンピックの氷上は、「喜んで出られるような舞台」にはなっていませんでした。彼女はまるで晒し者のようでした。見ているのが辛かった。
「自分が優勝したら表彰式は行われない」という状況下でモチベーションを維持する事なんて……できるわけないだろうなぁ。

3位 坂本花織(SP3位、FS3位)
くらーい雰囲気になってしまった女子シングルでしたが、その暗さを吹き飛ばしてくれたのが坂本選手。彼女の頑張りのおかげで、表彰式が無事執り行われました(ワリエワ選手がミスして「これで表彰式は中止されないだろう」と語ったというのは、悲しすぎますが)。競技とは関係ない事も質問され、いつもとは違う雰囲気で、やりづらかったと思います。にも関わらず、ショートに続いてフリーでも自己ベスト更新って最高に素晴らしい!!
彼女は大技を持っていないので技術的な凄さはわかりづらいのですが、件の織田信成さんの涙ながらの熱弁のおかげで(笑)、「すごいんだなぁ」と納得しました。彼女は今後は大技も練習していくそうですね。鬼に金棒! 楽しみです。そうやって成長を長く見ていけるのが楽しいのに、ロシアの女子選手ときたら……(涙)。

ロシアといえば、
浅田選手とキム・ヨナ選手がライバルとして競っていた頃、日本人はもちろん浅田選手を応援してましたし、韓国人はキム・ヨナ選手を応援していました。「だったら他国の人はどうなのか?」と気になっていたのですが、ロシアでは浅田選手の人気が高かったように思います。浅田選手に憧れた少女達は高難度のジャンプを飛ぶようになり、気が付けば日本を追い越してしまうようになりました。今回金メダルを取ったシェルパコワ選手の憧れの選手も浅田選手だったそうです。
トリプル・アクセルは跳べないけれど、スピードがあって安定感のある坂本選手は、もしかしたらキム・ヨナ選手に近いのかもしれません。浅田選手が活躍していた頃は「トリプル・アクセルが飛べる浅田選手はすごい」と言っていた日本人が多くて、坂本選手が活躍すると「大技がないのに、勝てる坂本選手はすごい」みたいになっているのが、当たり前とはいえ、なんだか興味深いです。結局、どっちもすごい!

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2位 アレクサンドラ・トゥルソワ(SP4位、FS1位)
すごかった! 無茶苦茶すごかった!! まさに衝撃。4回転ジャンプを5回!? 信じられない。呆然。
SPの感想文で「ファースト・インパクトは尋常ではありませんでした」なんて、ジュニア時代を振り返って書きました。あんなに驚く事はそうそうないと思ったけれど、また驚かされてしまった。

最近のロシアの女子選手は十代で一回だけオリンピックに出て引退してしまうような子が多いけれど、トゥルソワ選手にはやめないでほしいです。四年後絶対また見たい。なんか、「二度と氷の上には立たない。こんなスポーツ大嫌い」と言ったなどと報道されましたが、誤報であってほしい。
後日、ペアの応援をしていたトゥルソワ選手はとてもにこやかで、「こんなスポーツ大嫌い」と言った人とは思えませんでした。本当はフィギュア、嫌いじゃないよね、好きだよね。

トゥトベリーゼコーチに反旗を翻して、またどこかへ行ってもいいと思う。プルシェンコさんの所に行ってうまくいかなかったようですが、いっその事海外へ行ってしまえば……
と思ったのですが、カナダに行って戻ったメドベージェワさんの例もあるので、やっぱり難しいのかなぁ……。
でも、こんなスゴイ人が十代で引退するとか、もったいなさすぎる。楽しく長く続けられる方法があればいいのに……。

成績上位の3人が待機する部屋は「グリーンルーム」というんですね。
優勝が決まった瞬間、トゥルソワ選手がいなくて、「あれ?」とは思ったけれど、彼女は別の場所で荒れていたのか。
坂本選手が喜んでいいのか悪いのか、戸惑っているように見えました。

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それを思えば、男子シングルのグルーンルームは平和でした。なんか皆仲良さそうだった。が、思い起こせば、古くはソルトレークシティ五輪のヤグディン選手vsプルシェンコ選手は、「敵対ライバル」って感じでピリピリしていたような。バンクーバー五輪のライサチェック選手vsプルシェンコ選手も四回転論争で冷たい空気が流れていたっけ。男子フィギュアが平和になったのって、最近のような気がしてきました。フェルナンデス選手と羽生選手は同じコーチのもとで、ライバルだったとは思うけれど、フェルナンデス選手が大人だったような気がします。そこで学んだ(?)羽生選手も優しい空気を作ったのかもしれない。

なんて事を考えていたら、トゥルソワ選手がこんな事をしていた事が判明。

樋口選手のネイルを褒めていたのだとか。確かにかわいい……。
優勝者が決まるまでは、トゥルソワ選手もゴキゲンで、平和だったのかも。

追記(2022年3月7日)
トゥルソワ選手、エキシビションには笑顔で登場しました。氷の上に立った!
「二度と氷の上には立たない」というのは、誤報というか誤訳だったのかもしれないし、あるいは一時的に感情的になっただけかもしれませんね。
フリーの際、コーチは4回転ジャンプは4回にしておくように言ったそうですが、彼女の強い意思で5回チャレンジとなったそうです。コーチというのは大きな大会では、えてして安全策を勧めるものですが、このコーチがワリエワ選手とシェルバコワ選手も担当していたというのが微妙。素直に助言を聞けずに「私じゃなくて、別の子を優勝させたいんじゃないの? いや、私が5本決めて優勝してやるわ! 私が一番よ!!」みたいに逆らってもおかしくないかも。そして「ほら、どうよ! 5本決めてやったわよ!」と高笑いしていたのに、シェルバコワ選手に金メダルをさらわれて、パニックになったとか?(完全な想像)
あと、「みんな金メダルを持っている、私だけ持っていない!」という彼女の言葉に「え?」と思って調べてみたのですが、ジュニア時代は優勝しまくりのトゥルソワ選手、意外にもシニアの大きい大会(世界選手権や欧州選手権)で優勝してないんですね。ロシア選手権も勝ってなかった。これは、ちょっとびっくりしました。いやー、やっぱり、このまま引退しちゃったらダメだと思う!!

しかし、ロシアのウクライナ侵攻の影響で本人の意思とは関係なく、2022年の世界選手権には出場できなくなってしまいました。次に彼女の滑りを見られるのはいつになるのでしょう? どうか、あれが最後なんて事にはなりませんように。

1位 アンナ・シェルバコワ(SP2位、F2位)
涙のワリエワ選手、怒りのトゥルソワ選手の影響で(?)、優勝したのになんだか影が薄くなってしまったシェルバコワ選手。優勝したとはいえ、ショートもフリーも2位というのが、無難というか、印象に残りづらい……。
「誰も私の話はしていないみたい」と語ったそうで、切ないです。影だけではなく、体も薄いというか細いというか、心配になるレベルでした。けれども、彼女はもうきっと心おきなく引退できますね。これからは何でも好きな物を食べて、いくら太っても大丈夫。まだ17歳ですけどね、コーチに転身するそうです。予想通り、オリンピックで金メダルを取ったロシア女子選手は、十代であろうと辞めちゃうんですね(溜息)。
とても美しい演技でしたけれど、何年も現役で活躍して、いくつものプログラムを見せてくれた選手たちのようには、記憶に残らないかもしれません……。

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