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ルールが変われば順位も変わる

柔道団体戦、面白かったですね。
「小さい人が大きい人を投げられるのが柔道」とは言いますが、2階級上の相手を投げたり、15キロも重い相手を倒す姿が見られるのは団体戦だけじゃないでしょうか。
ただ、ケガをしないかが心配。実際にケガするシーンを見せられたら「団体戦反対」とか言っちゃいそうな気もする私です。

3対3で決着がつかず、最終戦の対戦カードを決めるルーレットが物議をかもしましたが、阿部選手はもう腕が上がらなかったらしいし、自分より大きい相手に勝った角田選手と高山選手が再び勝つというのは大変な事なので、リネール選手にあたらなかったとしても、日本は結構苦しかったのではないかと思います。
が、最終戦をやらなかったとしたら、どうでしょう?

「柔よく剛を制す」のが柔道なので、たとえば「3対3になってしまった場合は、6人の体重を合計して軽いチームの方を勝利とする」とかにしたら日本が勝ったのではないでしょうか。角田選手や高山選手のような勝利には、普通の1勝より価値を持たせてもいいと思うんだけどな。(←熱望しているわけではないです)



ルールを変えたら結果が変わってくる競技は山ほどありそうです。

まずは男子ブレイキン。
SHIGEKIXは優勝したフィル・ウィザードと準決勝で当たって敗れましたが、「Technique」では勝っていました。テクニックだけで順位を決めるなら金メダルかも。
ジャッジの判定はここで見られるのですが、1ラウンドの「Vocabulary」に関してはジャッジ全員がフィル・ウィザードに軍配を上げてました。
ボキャブラリーって、「スタイルの多様性とその豊富さ」という事らしいんですが、なんだかフワッとしてますね。振付師みたいな人を雇えば解決しそうな気がするのは浅はかかなぁ。「即興」とは言ってるけど、皆さんある程度事前に準備してるみたいだし。「お掃除スタイル」がある位だから「ラッキィ池田さんスタイル」とか「新しい学校のリーダーズ・スタイル」を取り入れたら多様性問題はクリアじゃないですか?
そうすると「Originality(独自性や創造性)」で減点されそうですけど、SHIGEKIXの場合、既に「Originality」の評価は低いし、「何点減点」っていうのはなくて「2人のうちのどっちが優れているか」という相対評価だから、「Originality」は諦めて低いままにして「Vocabulary」の評価を上げるという作戦もアリでは?
っていうか、「Originality」っていう言葉も微妙。ブレイキンに「新しい学校のリーダーズ」の要素を取り入れたら、逆に独自性や創造性が上がっちゃったりして……ってすみません、全くわかってないです(汗)。

ただ、SHIGEKIXがフリーズして、フィル・ウィザードが同時に同じポーズを取った時には瞬間的に「やられた~」と心理的なダメージを食らいました。スポーツ感覚でSHIGEKIXを応援していて「採点されてる」と思うからダメージを受けて、「こういうのってSHIGEKIXにとって不利になるの? フィル・ウィザードの評価が上がるの? どれ位の効果があるの? ひゃー」と戦々恐々としてしまったのですが、これが採点競技じゃなかったら、「うわっ、面白いっ!」とフィル・ウィザードに大拍手を送ったと思うんです。そうやって楽しんじゃう方がブレイキンには合ってるような気もして、「スポーツの祭典に競技として入れるべき物なのかな?」と疑問を感じました。

「日本人がやってきた柔道と外国人のJUDOは異なる」という話を時々聞きます。柔道において日本人が重要だと思っている事が、外国人にとってはそうでもなかったり、ちょっと感覚が違う所はあるのかもしれない。それでも色々歩み寄って、日本以外の国の競技人口も増えて、形を変えながら柔道はオリンピック競技として定着しました。
同様に、「ニューヨークの貧困地区における縄張り争いから生まれたというブレイキン」と「日本人がやるブレイキン」は違うだろうし、重要視する部分も違っていそうな気はします。競技としては歴史が浅く、試行錯誤の部分もありそう。5年後、「今のルールだったらパリ・オリンピックの金メダリストはSHIGEKIXだったのに」なんて事になっているかもしれません。もっとも、次回はオリンピック競技から外されるというし、「スポーツ」というよりも「ダンス」として文化色を強めていく可能性もあるのかな?



総合馬術団体は、減点方式らしいですね。「〇〇したらマイナス△点」というスタイルで得点を競うようですが、それこそ配点(ルール)によって順位は変わってしまいます。
選手交代した際の減点を100点だと勘違いしていた日本チームは一旦はメダルを諦めたそうです。実際は20点の減点で、銅メダルに輝きました。20点と100点って大きな違いのようですけど、勘違いするっていう事は、意外といつ改正されてても不自然じゃない類のものだったりして?



そしてスポーツクライミング。
2種目にわかれてて驚きました。それによって、得した人と損した人がいるんだろうなぁ。
日本人選手は「スピード」には出なかったので、「スピード」が苦手って事ですか? 楢﨑選手って、てっきり「スピード」得意なんだと思ってました(東京オリンピックのイメージ)。

衝撃的だったのは女子のボルダリング。
決勝の日、私は仕事でした。幸いリードからは生放送を見れたのですが、テレビに出ていた人達は「森選手がボルダリングで出遅れた、トップとは点が離れすぎている」というような話をしていたので、てっきり何かミスでもしたのかと思いました。リードは素晴らしくて(1位!)、総合では4位だったので、「表彰台まであと一歩、惜しかったなぁ。ボルダリングで、どんな失敗したんだろう?」と思いきや……ミスなんて、してなかった。第一課題の最初のホールドに物理的に手が届かず0点になっていたのでした。
体操選手は、鉄棒や吊り輪を始める前に補助の人に持ち上げてつかまらせてもらえるのに。森選手は誰にも助けてもらえず、つかめないホールドに向かってジャンプするだけだったのです。床の上をジャンプしてるだけでもボルダリングなのだろうか? 第1課題は0点。決勝に残った8人の中で第1課題が0点なのは森選手だけでした。このホールドをクリアしていたら、森選手はメダリストになっていたかもしれません。

たとえばバスケットボールなら、背の低い人は最初から「不利かもしれない」と覚悟して始めるだろうし、バスケットゴールの高さは常に変わらないけれど、ボルダリングのホールドの位置は毎回違うわけですよね。国内の大会でも最初のホールドが掴めない高さに設定されている事ってあるんだろうか? 「そういう設計の事もある」という事を、彼女がいつ知ったか気になります。「もっと早く知ってたら、この競技やらなかったのに」なんて思ったことはなかったのかな?



スケートボードの「ストリート」もルールが変わってました。「ラン」(45秒でコース内を自由に滑る)の比重が大きくなりました。堀米選手は「ラン」が苦手だそうで、もし3年前も今と同じルールだったら、東京オリンピックで金メダルは取れてなかったらしいです。
苦労はしていたようですが、ルールが変わっても連覇した堀米選手は本当にスゴイ!



アーティスティックスイミングのチームには、「アクロバティックルーティン」という種目が加わりました。無茶苦茶面白かった! が、日本はこの種目に関してはまさかの7位。総合5位に終わりました。他にも採点基準や技の制限などで細かな変更があったそうで、ルールが変わってなければ日本はもっと上の順位だったと思われます。ヘッドコーチの「(技に関する)情報が入ってくるのが日本は遅かった。そこで置いていかれているのが悔しい」というコメントに、ちょっともやもやしました。体操は情報戦に強いみたいな事を言っていて団体で金メダル取ったので、やはり情報戦も大事かも。

日本のアクロバティックルーティンのテーマは「アリゲーター」でした。
私の大好きなデヴィッド・ボウイの"Moonage Daydream"という歌は「I'm an alligator」という歌詞で始まります。「なぜアリゲーター?」と、ずーっと疑問に思い続けていたのですが、日本チームがアリゲーターの演技をした事で、更に「?」が頭を飛び交っています。
関係ないんですが、思わずChatGPTに「デヴィッド・ボウイは"Moonage Daydream"の中でI'm an alligator.と言いますが、なぜアリゲーターなんですか? イギリスではアリゲーターは何か特別な意味を持つ言葉なのですか?」と質問してみました。
すると、
「アリゲーターがイギリスで特別な意味を持つわけではありませんが、ボウイはこの言葉を使って、自身を強力で恐れ知らずな存在として描写し、リスナーに強烈な印象を与えようとしたと考えられます(一部抜粋)」
と答えてくれました。
日本のアーティスティックスイミング・チームも、「強力で恐れ知らずな存在として、観客に強烈な印象を与えようとした」……とか?